- 伝えたいことが相手に上手く伝わらずに困っている
- ビジネスでのプレゼンや提案がなかなか通らない
- チームでのコミュニケーションがスムーズにいかない
あなたは「言ったのに伝わらなかった」という経験はありませんか?
会議で自分の意見を述べたのに無視された、報告書を提出したのに読まれていなかった、大切な依頼をしたはずなのに実行されていなかった…。
こんにちは、ととのえです。
私はキャリアコーチとして1,000人以上のビジネスパーソンと関わる中で、「伝わらない」という悩みが成果の出せる人と出せない人の大きな分かれ道になっていることに気づきました。
この記事では、「伝わらない」を解決するための実践的な7つのコミュニケーションフレームワークを紹介します。これらを日常的に活用することで、あなたのコミュニケーション効果を格段に高めることができるでしょう。
なぜメッセージは伝わらないのか?


私たちのメッセージが伝わらない理由は、大きく分けて3つあります。
- 発信者側の問題:伝え方が不明確、情報の整理ができていない
- 受信者側の問題:注意が散漫、先入観がある、関心がない
- 環境の問題:ノイズが多い、タイミングが悪い、メディアの選択ミス
特に重要なのは、伝わらない原因の多くが発信者側にあるという点です。「相手が理解してくれない」と思いがちですが、実は「伝え方に問題がある」ケースが圧倒的に多いのです。



例えば新入社員の頃、私は上司に「この資料を改善してください」と言われて困惑したことがあります。何をどう改善すればいいのか全く分からなかったんです。後で「具体的にどこをどう改善したらいいですか?」と聞いたら、「最初のページのグラフの色を変えて、3ページ目の説明をもっと詳しくして欲しかった」とのこと。言われれば簡単な作業だったのに、指示が曖昧で伝わっていなかったんですね。
では、より効果的に伝えるためには、どうすればいいのでしょうか?
ここで役立つのがコミュニケーションフレームワークです。フレームワークを活用することで、情報を構造化し、相手に伝わりやすい形で発信できるようになります。
フレームワーク1: 5W1H


最も基本的で万能なフレームワークが「5W1H」です。
- Who(誰が):実行する人、関係者
- What(何を):実行する内容、目的
- When(いつ):実行する時期、期限
- Where(どこで):実行する場所
- Why(なぜ):実行する理由、背景
- How(どのように):実行する方法
活用シーン
5W1Hは、指示・依頼・報告など、ビジネスの基本的なコミュニケーションに最適です。特に、初めての相手や複雑な内容を伝える際に効果的です。
具体例
「明日、営業部の山田さんに決算資料を送ってください」という依頼は、5W1Hで以下のように具体化できます。
- Who:あなた → 営業部の山田さん
- What:先月分の売上実績と今月の予測データ
- When:明日の午前中までに
- Where:メールで
- Why:明日午後の経営会議で使用するため
- How:エクセルファイルをPDF化して送付



5W1Hを使うときの重要なポイントは、相手の立場になって「必要な情報は何か」を考えることです。山田さんが初めて依頼を受ける場合と、毎月同じ依頼を受けている場合では、詳細度を変えるといいでしょう。
フレームワーク2: PREP法


PREP法は、論理的な説明や説得に最適なフレームワークです。結論から話し、理由と具体例で補強し、最後にもう一度結論を述べるという構造になっています。
- Point(結論):伝えたいことの結論を最初に述べる
- Reason(理由):なぜそう考えるのかの理由を説明
- Example(具体例):具体的な事例や数字で裏付ける
- Point(結論):最後にもう一度結論を述べる
活用シーン
PREP法は、プレゼンテーション、企画提案、意見表明など、相手を説得したい場面で効果的です。特に、忙しい上司や意思決定者に対して短時間で伝える場合に有効です。
具体例
新しいプロジェクト管理ツールの導入を提案する場合:
- Point:「プロジェクト管理ツールAを導入することで、チームの生産性が20%向上すると考えています」
- Reason:「現在のツールでは、タスク管理と進捗共有に時間がかかり、週に5時間以上の無駄が生じているからです」
- Example:「マーケティング部門では既にこのツールを試験導入し、会議時間が週2時間削減され、納期遅延も30%減少しました」
- Point:「ツールAの導入で生産性が20%向上し、半年で投資回収できる見込みです。ぜひ前向きにご検討ください」



PREP法で最も重要なのは、最初に結論を明確に伝えることです。日本人は「起承転結」に慣れているため、結論を最後に持ってくる傾向がありますが、ビジネスではそれでは遅いことが多いんです。特に上司や役員クラスは時間がないので、結論から伝えると印象がグッと良くなります。
フレームワーク3: SDS法


SDS法は、複雑な情報や長い説明を簡潔に伝えるためのフレームワークです。全体像→詳細→全体像という構成で、聴き手の理解を促します。
- Summary(要約):伝えたい内容の全体像を簡潔に伝える
- Details(詳細):具体的な内容や詳細を説明する
- Summary(要約):最後にもう一度全体像をまとめる
活用シーン
SDS法は、複雑な報告、長時間のプレゼンテーション、教育・トレーニングなど、多くの情報を整理して伝える場面で効果的です。
具体例
市場調査の結果報告:
- Summary:「今回の調査で、20代女性をターゲットにした新商品の需要が高く、価格は2,000円前後が最適という結果が得られました」
- Details:「調査方法は…」「年齢別の反応では…」「競合製品との比較では…」「価格感度分析によると…」と詳細データを説明
- Summary:「つまり、20代女性向けに2,000円前後の価格で展開すれば、市場シェア15%獲得の可能性があります」



長い説明では、聴き手は途中で「この話は結局何が言いたいんだろう?」と迷子になりがちです。SDS法を使えば、最初に全体像を示すことで聴き手に安心感を与え、最後に再度要約することで記憶に残りやすくなります。私も1時間以上のプレゼンではこの方法を必ず使っています。
フレームワーク4: STAR法


STAR法は、自分の経験や実績を具体的に伝えるためのフレームワークです。特に面接や実績アピールで効果を発揮します。
- Situation(状況):どんな状況だったか
- Task(課題):何が求められていたか
- Action(行動):どのような行動を取ったか
- Result(結果):どんな結果が得られたか
活用シーン
STAR法は、就職・転職の面接、業績評価面談、自己PRなど、自分の能力や実績をアピールする場面で効果的です。
具体例
営業職の面接での回答例:
- Situation:「前職では、新規開拓が停滞していた金融機関向け営業部門に配属されました」
- Task:「3か月以内に2社の新規顧客を獲得するという目標が与えられました」
- Action:「業界専門誌の分析から、ITセキュリティに課題を持つ中小金融機関にターゲットを絞り、セミナーを企画して15社を招待しました」
- Result:「セミナー参加10社中3社と商談が成立し、目標を1社上回る成果を達成。半年後には部門MVPに選ばれました」



STAR法の強みは、抽象的な自己PRを具体的なストーリーに変換できることです。「私は粘り強い性格です」と言うよりも、STAR法で具体的なエピソードを話す方が説得力が格段に上がります。数字を盛り込むとさらに効果的ですよ。
フレームワーク5: マンダラート


マンダラートは、アイデア出しや思考の整理に使える視覚的なフレームワークです。3×3のマス目に情報を整理することで、思考を広げていきます。
中央のマスにメインテーマを置き、周囲8マスにサブテーマを配置します。さらに各サブテーマを中心とした新たな3×3マスを作ることで、アイデアを発展させることができます。
活用シーン
マンダラートは、ブレインストーミング、企画立案、問題解決のアイデア出しなど、思考を広げたい場面で効果的です。特にチームでのアイデア出しに適しています。
具体例
「新商品開発」をテーマにしたマンダラートの例:
中央:新商品開発
周囲8マスのサブテーマ:
- ターゲット顧客
- 価格帯
- 競合製品
- 差別化ポイント
- パッケージング
- 販売チャネル
- マーケティング戦略
- 今後の拡張性
さらに各サブテーマを展開:
例えば「ターゲット顧客」マスを中心に新たな3×3マスを作り、「年齢層」「性別」「職業」「居住地域」「趣味」「価値観」「消費行動」「ライフスタイル」「収入層」などに展開



マンダラートの魅力は、思考を視覚化できる点にあります。私もプロジェクトの初期段階でよく使いますが、チームで大きな模造紙に書き出すと、議論が活性化しますよ。デジタルツールでもできますが、アナログの方が創造性が高まる気がします。
フレームワーク6: DESC法


DESC法は、対立や衝突を解決するためのコミュニケーションフレームワークです。相手を攻撃せずに問題を解決する建設的な方法として知られています。
- Describe(描写):事実を客観的に述べる
- Express(表現):自分の気持ちや考えを伝える
- Specify(特定):具体的な解決策や行動を提案する
- Consequence(結果):提案が受け入れられた場合の良い結果を示す
活用シーン
DESC法は、部下への指導、同僚との衝突解決、クレーム対応など、感情的になりがちな状況でのコミュニケーションに効果的です。
具体例
締め切りを守らなかった部下への指導:
- Describe:「先週お願いした資料が、約束の金曜日までに提出されませんでした」
- Express:「資料がないと次の工程に進めないので、困っています」
- Specify:「今日の17時までに資料を提出していただけますか?もし難しいようであれば、どの部分で時間がかかっているか教えてください」
- Consequence:「資料が提出されれば、明日のミーティングで予定通り提案できますし、プロジェクト全体のスケジュールも守れます」



DESC法の最大の強みは、感情的にならずに問題を解決できる点です。「なぜ締め切りを守らないんだ!」と感情的に叱るのではなく、事実と影響を冷静に伝え、具体的な行動を促すことで、相手の反発を減らし、協力を得やすくなります。私も部下を指導する際には、この方法を意識しています。
フレームワーク7: バリュープロポジション


バリュープロポジションは、提案や交渉を効果的に行うためのフレームワークです。相手にとっての価値を明確に伝えることで、説得力を高めます。
- 対象者:誰に対する提案か
- ニーズ・課題:相手のどんなニーズや課題を解決するのか
- 提供価値:どのような価値や利益を提供できるのか
- 差別化要素:他の選択肢と比べて何が優れているのか
活用シーン
バリュープロポジションは、営業提案、企画提案、交渉など、相手に何かを提案したり説得したりする場面で効果的です。
具体例
新しいCRMシステムの導入提案:
- 対象者:「営業部門の管理職の皆さんにとって」
- ニーズ・課題:「顧客情報の管理に時間がかかり、営業活動に集中できないという課題を抱えている中」
- 提供価値:「このCRMシステムは、データ入力時間を50%削減し、顧客対応の質を向上させることで」
- 差別化要素:「既存システムとは異なり、AIによる自動データ入力と分析機能により、営業成績を平均20%向上させることができます」



バリュープロポジションで最も重要なのは、「相手目線」で価値を伝えることです。自社製品やサービスの機能や特徴ではなく、それによって相手が得られるメリットや解決される課題に焦点を当てることで、提案の説得力が格段に上がります。
まとめ:フレームワーク活用の秘訣
「伝わらない」という問題を解決するための7つのコミュニケーションフレームワークを紹介しました。最後に、これらを効果的に活用するための秘訣をまとめます。
フレームワーク選びのポイント


ベストなフレームワークは状況によって異なります。以下のポイントをもとに、最適なものを選びましょう。
- 目的に合わせて選ぶ:情報伝達なら5W1H、説得ならPREP法やバリュープロポジション、衝突解決ならDESC法など
- 相手に合わせて選ぶ:忙しい上司にはPREP法、詳細重視の人にはSDS法など
- 状況に合わせて選ぶ:公式な場ではSTAR法、ブレストならマンダラートなど
フレームワーク活用の実践ステップ
フレームワークを日常のコミュニケーションに取り入れるための実践ステップです。
- フレームワークを覚える:まずは1つのフレームワークを完全に習得する
- 事前の構成検討:重要な会話の前に、適切なフレームワークを選び、内容を整理する
- フィードバックを得る:伝わったかどうかを確認し、改善点を見つける
- 実践と改善の繰り返し:日常的に使いながら自分のスタイルに合わせて調整する
- 複数のフレームワークを組み合わせる:状況に応じて複数のフレームワークを柔軟に活用する
コミュニケーションは単なるスキルではなく、相手との信頼関係を構築するための重要な手段です。どんなに優れたフレームワークを使っても、相手を尊重する姿勢や誠実さがなければ、真の意味でのコミュニケーションは成立しません。



これらのフレームワークはあくまで「道具」です。最初は意識して使うと少し不自然に感じるかもしれませんが、繰り返し練習するうちに自然と身につき、あなた自身の「伝える力」になっていきます。まずは日常の小さなコミュニケーションから始めてみてください。
「伝わらない」という悩みを解決するための第一歩は、自分自身のコミュニケーションスタイルを見直すことから始まります。これらのフレームワークを活用して、より効果的に伝えられるようになれば、仕事はもちろん、プライベートの人間関係も格段に良くなるでしょう。
今回は以上です。皆さんのコミュニケーションがより良いものになることを願っています。